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Uppingham School

2010年10月29日 14:01:00
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筆者は2010年10月11日、ロンドン郊外にあるUppingham Schoolを訪問した。ロンドンのターミナル駅の一つであるセント・パンクラス(St. Pancras)から列車で約1時間のところにあるKetteringという地方駅に降り立つ。全くの田舎町である。中世の佇まいを残す町の外には田園風景が広がるのみである。そこからタクシーに乗り約20分、30ポンドの道のりである。セント・パンクラスからKetteringまでは往復で70ポンドである。

このUppingham Schoolは中国にある、ある大銀行の頭取から紹介された。理由はその銀行の頭取がUppingham School出身であるからである。頭取は齢60歳ぐらいであろうか。中国に何十店舗という支店を展開する大銀行の頭取である。

筆者は2010年10月11日、Uppingham Schoolを訪問した。Uppingham Schoolは全英でも極めて稀な全寮制ボーディング・スクールである。全寮制とここで言うのはDay Studentが居ないという意味である。イギリスでもアメリカでもそうであるが、ほとんどのボーディング・スクールはDay Student、すなわち通学生をある一定のパーセンテージ、多いところでは50%以上を抱えている。また、イギリスでは5 days boardingと言って、土日は両親の元に子供達が帰るというボーディング・スクールもある。ところが、このUppingham Schoolは土日も子供達が家庭に帰ることはない。Uppingham Schoolの95%以上はイギリス人、すなわちイングランドから来ている子供達であるが、そのイギリスから来ている子供達も土日に家庭に帰ることはない。そういう意味でイギリスでもこのような完全な全寮制ボーディング・スクールは非常に数が少ないので全英から生徒が押しかけて来ている。だからこのUppinghamに入学するのは非常にCompetitiveである。

このUppingham Schoolに最初に留学して来たアジア人がたまたま私の知り合いであるので、この学校を訪問することにした。そのアジア人は1954年に中国から初めてこの学校に留学して来たアジア人第1号である。その弟もこの学校に留学して来ている。兄の方は中国でも有数の銀行家、弟は中国でも有数の外科医となっている。

この学校は筆者が訪問した日現在で798名の生徒がおり、13歳から18歳まで。共学である。この学校に入るにはかなりCompetitiveな競争をくぐり抜けなければならない。通常イギリス人の家庭ではこういった有名なボーディング・スクールに子供を入れる為には少なくとも2年、普通は3年前からその学校とコンタクトを始め、学校も家庭もその学校を良く知るという意味で何回かの学校訪問を3年前ぐらいから重ねるのが通常である。そのようにして学校側と両親との間で信頼関係が構築出来て初めて入学試験を受けることが出来る。こういう点がアメリカのボーディング・スクールとはかなり趣が違っている。アメリカでは面接、そして入学可否決定と極めて短期間で進むが、イギリスでは平均的に2年前から両親が学校と信頼関係を何度かの学校訪問を通じて構築してから入学が認められる。そこで両親が入れたいと思うボーディング・スクールには2年前、3年前、あるいは場合はよっては4年ぐらい前から両親がコンタクトを開始する。筆者が訪問した時には2011年ではなく2012年の面接が既に開始されていた。すなわち2年先の入学の面接が既に開始されているということである。13歳で男の子90名、女の子60名を採用する。14歳で女の子30名を追加して採用する。

入学試験は英語、数学、そしてインタビューがあるが、入学試験をいつ受けるかは両親と学校が相談して決める。

日本人の場合には数学はともかくとして英語が問題であるので、両親が学校とよく相談し、英語の試験を受けるぐらいのレベルに達した時に試験を受ける。それが入学の2年前でもいいし1年前でもいい。通常はPrep Schoolと言われる予備校に入学し、こういった有名ボーディング・スクールの受験に備える。そのPrep Schoolで十分に英語を叩き込まれる。Prep Schoolといっても英語だけではなく全科目を教えるので心配はいらない。日本から来る場合には10歳ぐらいにイギリスのPrep Schoolに入学して英語を叩き上げておく必要があるであろう。

この学校はイギリスでも最も古い創立年月日を誇っており、1584年の創立である。

現在香港から約10名が来ている。アジアからの留学生で一番有名なのはスタンレー・ホーである。スタンレー・ホーは香港きっての財界人である。日本人は現在1名しかいない。

この学校の特色は何と言ってもMusic Departmentである。音楽関係の先生が何と56人おり、15台の個人ピアノレッスン室、バイオリン、その他の弦楽器は全て個人レッスンが用意されている。あらゆる楽器を個人レッスンで教えている。

Choirのチームだけで6チームもある

また語学教育にも力を入れており、ヨーロッパの言語はほとんど全て教えられているのみならずロシア語及びマンダリンも教えている。バイオリンの先生だけで5名の先生がいる。また面白いところでは自動車工場という校舎があり、そこでは子供達が自動車を作っている。

1対1のExtra Helpも可能である。従って、Struggleする場合には1対1の個人教授も可能である。

この学校は生徒は全員学期の間はキャンパス内の寮に住む。また寮には必ず寮長たる先生及び2名のアシスタントの先生が寮に住んでいる。寮自体は15の寮がある。それぞれがHouseと呼ばれている。従ってこの学校は現在60人の先生が生徒と寝起きを共にしているということになる。

また、この学校では約5%から10%の生徒がDyslexiaであり、Dyslexiaに対しては学校を挙げて取り組んでいる。

この学校は制服制であり、男の子はブラック・ジャケット、グレーのズボン、ネクタイを着用することが義務付けられている。

またITのクラスルームもあり、アートセンターというクラスルームもある。アートセンターではありとあらゆるアートが教えられている一つのビルがアートセンターになっている。またスポーツセンターもあり、スポーツセンターではアーチェリー、スカッシュ、ジム、バスケットボール・コートがあり、マーシャル・アートとしては空手、柔道がある。

また宗教学部があり、あらゆる世界の宗教が教えられている。政治学部ではあらゆる政治科目が教えられている。

この学校は9月3日に学期が始まり6月30日に終わる。3学期制である。男女共学であるが、無論女子の部屋に男子が入ることは出来ないし、その逆も入れない。各女子寮、男子寮のコモン・ルームまでは異性生徒が入れる。

この学校の特色は、今やイギリスでも少なくなった各寮に食堂が付いているというシステムにある。従って、この学校は15の寮があるから15の食堂を持っている。一旦その寮に配属されると、卒業までの5年間はその寮で過ごす。ハリー・ポッターにあったような寮システムである。全員がその寮の食堂で食事をする。寮の食堂があるということは寮ごとに厨房があるということである。昼食はかなりフォーマルであり、各テーブルに先生が着く。朝食と夕食は着席自由となっている。筆者は昼食を生徒らと共にした。

授業料及び寮費込みで28,000ポンドである。

この学校はフランスの学校とExchange Programがあり、フランス人の生徒が常に数名来ている。

生徒はラップトップは持ち込むことが許されていない。全てのラップトップは学校から提供される。学校提供のラップトップには全てインターネットのサイトへのアクセス・コントロールが付いている。

消灯は9時45分から11時の間であり、上級生ほど消灯が遅い。下級生1年目は相部屋である。相部屋と言ってもベッドが20名ぐらいのコンパートメントに分かれた一部屋の中に板で仕切られた一人用のベッドがズラッと並んでいるという感じである。但し勉強部屋は個室となっている。

休みはOctoberに2週間、クリスマス休暇が3週間、Februaryに1週間、Aprilに3週間、Mayに1週間、夏休みが9週間である。その期間は寮から出て行かなければならないので、多くはホスト・ファミリーたるGuardianの家に泊まったり、本国に帰ったりする。土曜日にも当然授業がある。

この学校の特色は、寮ごとに先生たるHouse Masterがおり、その下に4~5名のTutorたる先生が付く。各寮にTutorが付いているのである。Tutorは1週間に一度夕方の6時から夜の11時まで寮に来てくれる。そして勉強を個別の生徒のニーズに合わせて個別教授をしてくれるのである。筆者が会ったHouse Masterは40台の男の先生であったが、何と筆者と同じ弁護士である。しかも全世界的に有名なリンクレーターズ(Linklaters LLP)というイギリスの大Law Firm(弁護士数が数千人)のビジネス関係の弁護士をしていた経歴の持ち主である。彼はケンブリッジの歴史学部を出て、その後法科大学院で2年間で弁護士資格を取得、その後10年間は弁護士業務をロンドンの大Law Firmであるリンクレーターズで行なっていたが、転職して現在はこの学校の歴史の先生をしている。

生徒は同じHouseに5年間住むことになるので、Houseの中、すなわち5~60人の上級生、下級生のグループは極めて連帯感が強くなる。各Houseの中には寮長たる先生の補佐をするHouse Mistressが住んでおり、色んな形での生徒の相談に乗っている。

Philosophyのクラスもある。

この学校では年間13回から14回Musicのオーディションがあり、オーディションにパスするとスカラシップがもらえる。その他にAcademic Scholarshipもある。この学校はアート、Music、学業、スポーツを全般的に力を入れている。

イギリスの有名なボーディング・スクールではスポーツに力を入れる男子校が多い中では音楽、芸術、スポーツに均等に力を入れている学校と言える。

筆者が会った日本人はXX県のXX市の公立小学校5年生の時にイギリスに来て現在Uppingham Schoolの3年目であったから、イギリス生活は5年目になる。彼は現在美術、演劇、哲学、倫理を選択している。イギリスの大学入試では人柄、面接、やる気で決まるので、将来はOxford、Cambridgeを狙っていると言っていた。彼の両親は数学者であり、両親とも大学教授である。両親が「日本の教育では駄目だ。個人を大切にする教育を受けさせたい。」ということでイギリスのボーディング・スクールに小学校5年生から来ているという。彼によれば、確かにイギリスの教育はクラスルームは全てDiscussion方式で進んでおり、自分の意見を言うことが授業では大切であるという。宿題もエッセーで自分の意見を書くという宿題がほとんどである。美術とか演劇でも「これをやれ」ではなく、「これを元に自分の何かを発表しろ」という教育方針である。この学校ではアメリカのHarvard等のIvy Leagueを受験する生徒も多くいるという。Discussion方式であるから、ScienceでもMathでも答えが重要ではなく、答えに辿り着く生徒独自のやり方を見つけることを尊重するという。

彼はOBHというPrep Schoolから来ている。OBHはサフォークにあるOld Buckenham Hallという学校である。

シャーボーンにはシャーボーンの語学学校があるが、これは夏の間のみである。シャーボーンは有名なボーディング・スクールであるが男子校、女子校別々になっているので、こことは違う。

イギリスのボーディング・スクールに入るにはGuardianが必要である。3年生から4年生に行く時に全国共通のテストがあり、それで一定のレベルを取ることが進学の条件となっている。但し、一定のレベルと言っても自分が翌年度に選択する科目を中心に一定のレベルを取るということであるから、数学が嫌いであれば数学の成績は低くてもいい。何故なら進級後は数学を取らなければ良いからである。

House対抗競技というのがあるが、ハリー・ポッターで見るような激しい対抗戦ではなく、合唱やミュージカルの対抗戦といったものである。

この学校ではHistory Tripというのがあり、歴史の勉強を兼ねてヨーロッパ大陸やアメリカに修学旅行に行く。今回はドイツの東西分裂という研究テーマでドイツに行った。またアメリカの独立というテーマで来年はフィラデルフィアに行くという。

この学校では音楽関係だけで200のクラスが用意されており、Choirだけで6つのグループがある。

中国にはこの学校の卒業生が香港を中心に120名居る。Friends of Uppingham in Hong Kongという同窓会組織も存在する。

なお、私が会った日本人生徒のe-mail addressは●●●●●@uppingham.co.ukである。

以上