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世界で最初に義務教育を始めた国を知っていますか?

2010年11月26日 12:54:00
 このように聞くと、世界史を勉強したことのある人は、プロシア(プロイセン)のフレデリック王だと言うでしょう。確かにそれが正解です。1717年プロシアのフレデリック王は全国民に対して命令を発布し、プロシアの全ての子供は義務教育に服さなくてはならないとしました。ところがその当時のドイツ国民はこれに猛反対をしたのです。それを横で見ていたフランスも義務教育を導入する気配はその後100年以上ありませんでした。さてイギリスとアメリカが義務教育を始めたのは19世紀の末になってからです。

しかしフレデリック王が義務教育を発布したよりもさらに2989年よりも前に義務教育を制度化した民族がいたのです。それが正にユダヤ民族です。

ユダヤ民族はモーゼに率いられてエジプトから脱出した時に、モーゼが「ユダヤの子供たちには全て全員に文字を教えなくてはならない。全員が文字を読めるようにしなければならない。」と命じたのです。

このようにユダヤ人達は人類の歴史で初めて義務教育を導入した民族であると言われています。

フレデリック王よりもさらに遡ること17世紀前、エルサレムがローマに陥落する直前ユダヤの高僧であったジョシュア・ベン・ガムラはユダヤ人達が納める市民税によって支えられ維持されるべき学校制度を建議し、これが実施されました。ユダヤの法典であるタルムードによれば、ユダヤ人の村々でもし義務教育を担当する先生が存在しない村があれば、それはユダヤ人の村とは認めるべきではないとまで言い切ったのです。

このような歴史があったからこそ、中世ヨーロッパの暗黒時代すなわち庶民が全く教育を受けられなかった時代にあってもユダヤ人達は高い学問水準を維持できた訳です。

さらに特筆すべきはユダヤの教育方法ですが、これは世界のどの教育方法とも全く違った特異なものであったのです。

それはユダヤの法典であるタルムード及びミシュナがCritical Thinkingを極めて重視していたことから由来しています。Critical Thinking、すなわち独自の批判的な考え方を各自が持たなければならないとする教育です。


その教育を具体的に行なう方法として、生徒2人が1組になって声を出して議論しあうというダイヤログ方式の教育方法が古代からユダヤ民族では採用されました。これをヘブルタ式教育と言います。ヘブルタ式教育に於いては、良い生徒、すなわち成績の良い生徒とは先生を困らせるほどの質問をする生徒である、そしてその生徒の質問によって先生がより賢くなっていくような質問をする生徒であると言われています。すなわち質問こそ教育の母であるという考え方です。

ところが皮肉なことに、ユダヤ人達が閉じ込められていたゲットーから解放されることと相反して、このユダヤの批判的探究心、批判的思考方法を教育目的とする教育が薄れてしまい、言われたことを丸暗記する非ユダヤの教育の影響を受けるようになって来ました。

これではいけないと21世紀になり、ユダヤ人達はむしろその子供をその国の義務教育の公立学校から引き揚げ、自分達のコミュニティーで作ったユダヤ人学校に入れさせようとする動きが活発になっています。すなわち、その国々の公立教育、公的教育を拒否し、自分達のコミュニティーでユダヤ人の古来からのヘブルタ式教育を受けさせようとする動きです。いわゆる自主的登校拒否をユダヤ人達が始めたのです。

この考え方の背景には、子供は知識を積み込むデータ・プロセッサーではない。この世の中は特にこの複雑及びスピード化した現代にあっては、知識や技能よりももっと重要なものがある。知識や技能を教えるような教育は駄目だというユダヤ人達の親の考え方に基づいているのです。

それではユダヤ人の親達はどういうものがこの世の中、特にこの現代では重要だと考えているのでしょうか? それは、人生に於ける精神的及び倫理的なベースを子供達に教える方がよほど重要であると考えているのです。特にユダヤ人の伝統に根ざした倫理観、そして精神性を教えることがよほど重要である。そう考えるユダヤ人の親達は通常の普通科の学校から子供を引き揚げ、自主的当校拒否をさせ自分達のコミュニティーで作った学校に行かせるようになりました。

ユダヤ人の親達はこの混迷した現代社会にあっては、ユダヤのIdentityを植え付ける教育を子供にすることの方がよほど将来の子供の幸せに繋がると考え始めたのです。自分達のIdentityをしっかりと持った子供の方が自分に対し自信を持ち、自分とは何かということをより深く考えるようになり、その後大学や大学院に進んだ場合に非常にしっかりした学問的成績を挙げることができるとユダヤの親達は自信を持っているのです。

 人と違うようになること、人と違う自分を見い出すこと、その為にはユダヤの伝統的な倫理観と精神性を子供の時から植え付ける必要がある。これがユダヤの親達の考え方です。しっかりとした伝統に根ざした批判的思考能力を身につけること、これがユダヤ教育のエッセンスです。実際こうしたユダヤ教育を受けた子供達は大学、大学院と進むにつれて非常に優秀な成績を修めていることが実証されています。これは何故かと言いますと、自己及び自尊心を確立し、人と違った自信をそれぞれのユダヤ人達が持つからだと言われています。

歴史を遡りますと、こうしたユダヤの独特の教育があったからこそユダヤ人はユダヤ人たり得てきた訳です。ユダヤ的精神性、ユダヤ的道徳、これを世代から世代に受け継がなければユダヤ人はとっくの昔にこの世から消えていたことでしょう。

以上